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開いた雑誌は、女性雑誌。

まだコスメに使えるような女性の要望は無いかな、とコラムを中心に読んでいく。

「―――あの人、セリだよね?モデルの?」
「あ、はい」
「知り合い?」
「俺カメラマンのアシやってるんで。その縁で仲良くさせていただいてます」
「へー」

俺が読み進めていく先で、そんな会話が繰り返されている。

自分の話をされるのはなんだかくすぐったいのだが、口をはさんでいいのか迷い、結局聞こえないふりをすることで落ち着いている。

「ああしてると、雑誌から抜けだしたみたいだよね」
「本当、すごく綺麗」
「―――あの、さすがに恥ずかしいんですけど……」

だけど、どんどんエスカレートする会話に、俺はついに二人に目を向けた。すると、ナオ君と店員さんはおかしそうに笑いだす。

「セリさんは自分がどれだけ綺麗か、ちょっと自覚が足りないんです」
「そうだよねー。俺みたいにイケてない奴らの気持ちなんか分からないかー」
「そんなことないですよ、美容師さんすごくおしゃれです!」
「はは、ありがとうございます」

そんな会話が続いて、ちょっとだけドキッとした。

冗談交じりの、会話を盛り上げるための一言。だけど、俺にはそうやって簡単に流すことはできなかった。

―――俺は、誰よりも不細工だったことがあるんだ…

きっと、今の二人にそういったって信じないだろう。謙遜だと、それこそ笑って流すかも知れない。

どうしてドキッとしてしまうんだろう。

『僕』の存在が、また顔をのぞかせる。この感情に名前なんてつけられないけれど、言葉にできない後ろめたさみたいなものを感じた。

そんな感情を振り切るように、俺は雑誌に集中する。

やっぱり女の子はピンクが好きなんだな、と思うと微笑ましくて笑えてきた。モデルさんはとても綺麗な人たちばかりで、自分の素顔を公開してまでみんなに美容テクニックを教えて行こうとする姿勢は感心する。

「―――はい、おしまい」
「ありがとうございます」

そんな風に考えていると、ナオ君のカットが終わったようだった。ゆるく巻いてもらっており、ヘアスプレーだろうか、淡く茶色がかった髪がとても綺麗だった。






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