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疑わしげな慶太の様子に苦笑しながら、『ナオ君と楽しめるといいね』と付け足した。たしかに、慶太からしたらデートについてこられるわけだからいい気分がする訳がない。
「それって…セリさん、柊先輩と付き合ってるんですか?」
「え………っ」
予想外の言葉に、俺は目をまるくした。
「そ、そんなわけないじゃないか。だって、俺こんなんだし」
「無駄に綺麗だから、そっちの趣味があるんじゃないかと思っただけです。柊先輩も、悪い気はしないんじゃないかって」
「もう、柊君とは普通だよ」
そりゃ確かに、ちょっといやらしいこともしたけど。
キスをして、身体を触られて、抱きしめられて。
思い出して、なんだか顔が熱くなってきた。
―――泣きながら必死だったから特に意識してなかったけど、すごいことだよね……っ
「―――何赤くなってるんですか。ますます怪しいんですけど」
「違うって!もう、今日は慶太やけに絡んでくるね」
「別に、そんなことないです」
ぷい、とそっぽを向かれ、図星だったんだな、と思った。
……あ、そうか。今日ナオ君を俺がとっちゃったからか……
「ふふ、可愛い」
「子供扱いしないでくださいよ」
「うん、ごめんね」
素直に不機嫌になっている慶太に、俺はくすくす笑ってしまった。
一途で素直で、なんて可愛い恋愛をしているのだろう。
そう思っていると言葉に出てしまい、慌てて謝る。
「おや、盛り上がってるね」
「浜口さん」
そうこうしていると浜口さんが戻ってきて、俺たちは再び仕事に取り掛かる。
「スタジオの方、どうでした?」
「いや、さすがトップモデルの皆さんだよ。映像でもとても魅力的だね。二人にもぜひ出て欲しかったよ」
「いえ、あのメンバーの中には…ちょっと」
まだモデルを始めて半年の俺には、ちょっときつい。
そんな意味を込めて苦笑していると、浜口さんがおかしそうに笑った。
「いまどきの子はびっくりするくらい謙遜するというか、奥ゆかしいというか。もっと自分を売らないと、生き残れないよ?」
「はい…そうですね」
「そうそう。…じゃ、サンプルチェックして、さっさとスタジオ見学行こうか」
「はい」
浜口さんの言葉に頷くと、俺たちはそれから黙々と作業に入っていったのだった……。
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