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―――目を覚ますとそこは、ベッドの上だった。

泣いた後特有の倦怠感と、瞼が腫れて狭くなった世界。

それでも、心はとても晴れやかだった。

1人袋小路に入っていた思考を、柊君が導いてくれた。靄が晴れ切ったかのような気分を表すように、カーテンからのぞく朝日が眩しい。

「……柊君?」

だけど、肝心の柊君は隣にいなかった。

ダブルベッドの隣に枕があって、一緒に寝ていたことは分かるのに、柊君はここにはいないようだった。

シーツに触れてもすっかり冷え切っていて、随分前からいないことが分かる。

不安になって起き上がると、俺はリビングに向かった。もしかしたら寝過してしまっていて、柊君はどこかに出かけたのかもしれない。

「―――――っ」
「あ、起きたか」

しかし、そんな心配は杞憂だった。柊君はリビングでコーヒーをすすりながらニュース番組を見ていたのだ。

「おはよう……」
「あぁ、おはよう」

ホッとして、小さくほほ笑みながら挨拶をすると、柊君はそのままどこかに行こうとした。

思わずついていくと、『ヒヨコかよ』と笑われ、恥ずかしくなってリビングに戻った。

「―――ホラ、食べな」

柊君はキッチンにいたようで、戻ってきた彼の手にはコーンスープとトーストがあった。

「ありがとう」
「別に、インスタントだし気にすんな」

そう言われ、スプーンを差し出されると、俺は恐る恐る口をつける。固形物は少し自信がなかったから、スープを一口飲んだ。

「……おいしい………っ」

一口飲んで、涙がジワリと滲んだ。

今までの食事とは違う、染みわたる様なおいしさ。身体の中になじんで、エネルギーに変わっていくのを肌で感じる。

久々に、本当の意味でご飯を食べた気がした。

「大げさだな」

そんな風に柊君は笑ったけど、俺にとってはそれくらいおいしかった。

―――今日はきっと、一番幸せな朝だ。

世界中の人には何気ない日でも。俺にとってはこんなに大事な日なんだよ、って言ってしまいたい。

ありがとう。また、頑張れるから。

―――だから、今は前に進むことを許して下さい。





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