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――次の日。今度は別スタジオで撮影があり、俺は目が回るほどの忙しさを感じていた。

スタジオを借りるには経費がかかり、数日で一気に撮ってしまうことが多い。

大学に通っている俺は講義が終わるとすぐにスタジオへ行き、深夜まで撮影が及ぶこともざらだった。

「よし、10分休憩ー」

だから、相変わらず間延びした号令がかかったとき、俺はもうヘロヘロだった。

夏に冬服を着ているせいもあるが、汗を満足にかくことが出来ないのが辛い。

すぐにスタッフさんが用意してくれた椅子に座って休憩していると、昨日見た影があった。

「…………お」

昨日器材を大量に運んでいた彼の背中が見え、俺は小さく笑う。

今日はあまり荷物が多くないようで、せっせと働きアリのように動き回っていた。

「――昨日は大丈夫でしたか?」

なんとなく放っておけなくて、俺は彼に話し掛ける。

彼はまた驚いたようにしていたが、前髪で表情はよく見えなかった。

それでも、野暮ったい頭が小さく頷いて、『………はい』と蚊の泣くような返事があった。

「よかった。俺お節介てよく言われるから、迷惑かなって思ってたんだ」
「そんなこと……」

首が取れそうなほど頭をブンブン振る彼に、俺は小さく笑った。

その時、後ろから休憩終了の号令が聞こえてきて、俺は慌てて持ち場に戻ろうとする。

「…あの、よかったら撮影の後、話せませんか?」

戻ろうとした背中にそんな言葉があって、俺は嬉しさにニッコリ笑って頷いた。

「喜んで。予定あけときますね」





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