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柊君自身肘をついているため重さは全く感じなかったが、柊君の息遣いを感じるほど近くにある気配に、俺は身を固くしておくしかない。
「………っ」
ぴちゃ、と濡れた音が耳元でして、くすぐったいような感覚が耳からじんわり広がっていく。
耳を舐められている感覚は体中の神経を敏感にしているみたいで、全身が柊君の一挙一動に翻弄される。
「声、出せば?」
「いやだ」
「―――意地っ張り」
馬鹿にしたような、からかうような笑い声がして、柊君の手が俺の身体を撫でる。
服の上から、頬、首筋、背中、そうして腰に回って胸を撫でていく。
服の上からの感覚は、柊君の体温を伝えながらも直接の刺激は来ず、なんだかもどかしい。俺は横を向いた顔を戻すこともできず、ギュッと目を閉じてひたすらその感覚に耐えた。
そんな俺をあざ笑うように、柊君の行動はどんどん大胆になっていく。
「あ、ちょ、」
服の中にするりと入って来た腕が、俺の乳首をふっとかすめた。最初は偶然かと思ったが、執拗にそこに指を這わされて戸惑いで柊君を見上げる。
「なに、感じる?」
「そうじゃなくて…」
「じゃあ何?」
「………は、恥ずかしい」
誰にも触られたことがないその場所に、柊君の乾いた大きな手が触れてきている。俺の体温があがってきているのか、少し冷たい手で撫でられると切なくなるのだ。
それがとても、恥ずかしい。
真っ赤になってしまっているであろう顔は、きっと混乱の極みで情けない顔をしているだろう。それでも、柊君は手を止めてくれなかった。
「……や、んっ」
「少し尖ってきたな」
「言わないで…っ」
まるで観察でもしているように、柊君の声は淡々としている。俺だけがこんなに恥ずかしく翻弄されているのだと思うとたまらなかった。
「や、ちょっ、あっ、あ、」
「……おもしれえくらい反応するのな」
「んーっ」
乳首に爪を引っ掛けるようにしてつままれると、俺の口から情けない声が出た。それに柊君が感心したように呟くから、唇を噛んで堪えるしかない。
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