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俺は、何一つうまくできない。
心配かけないで過ごすことも、何でもない風を装うことも。
「―――強がるってことは、自分の弱さを知ってるからする行為だ」
不意に、柊君がそういった。そうして、俺の頭を優しく撫でる。
柊君は、どうしてそんなに優しいんだ。
縋ってしまいそうになる。
今は、弱っているから簡単に甘えてしまいそうになるんだ。
だけどそんなの、甘えられる人には迷惑でしかない。
俺なんかが甘えてはいけない。他の人では何でもないようなことにもへこたれてしまうのに、どうして甘えていられるだろうか。
「オマエはずっと我慢してたけど、傷ついてるんだよ。高校時代からずっと。――傷つきたくなくて臆病になるのなんか当然だ。それを隠そうとするな、受け入れろ」
「受け入れるって…」
「泣けばいい。気が済むまで泣けば、すっきりする」
俺は、目に乗せていた腕を下ろして柊君を見た。
柊君は真面目な顔で俺を見ていて、相変わらず頭を撫でてくれている。
その姿に、優しさに、泣き叫びそうになった。
だけど、俺の意思に反して、身体は我慢するように唇をかむ。柊君が『強情だな』とため息をついて、俺を上から見下ろしてきた。
「泣きたくないなら、泣かせてやる」
「…………っ」
急に冷たくなった柊君の声に、俺は逃げるように身をよじる。
しかし、柊君の腕が俺の腕を絡め取り、上で一つにまとめ上げてしまってそれすら敵わなくなってしまった。
怖い、怖いよ。
泣かせる、って何をするんだ。
俺を見降ろしてくる柊君の視線は、何も語らない。何をされるかわからない俺の口から出たのは、何とも情けない一言だった。
「………痛いのは、嫌だ」
それを聞いて、柊君は呆れたように喉の奥でクッと笑った。
「オマエ、泣かされるのは別にいいのかよ」
「――――っ」
言われている意味がわかって、俺はふいっとそっぽを向いた。恥ずかしくて、柊君の顔が見られなかったのもある。
「……じゃ、泣かせてやるか」
柊君はそういうと、俺の寝ているソファーに腰掛けると、俺の顔を覗き込むように上に乗ってきた。
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