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思い出して、その他の余計な感情まで思い出してしまう。
ナオ君の申し訳なさそうな顔。勝ち誇った顔の慶太。
フラッシュバックして、くらくらした。
ナオ君、慶太―――
「………うっ、」
吐きたい、吐きたい。
それは衝動だった。言われるがままに出て右のトイレに駆け込み、夕食を吐きだす。
最近食べなかったせいもあるのか、急に食べた食事がとても苦しかった。
「…はっ、ぁっ」
「――――大丈夫か」
「………柊君、」
不意に、背中に温もりを感じて、俺は小さく息を吐く。急に駆け込んだ俺を不思議に思ったのだろう。
背中をさすって、窺うように俺を見ているのを気配で感じる。
「―――食べすぎちゃったみたい」
「オマエ、今日半分も食べれてなかっただろうが」
「でも、お腹が苦しくて」
「いい加減認めろ!オマエは限界なんだよ!」
「っ」
急に強い調子でいわれ、俺はびくっと身体を震わせる。柊君は俺が落ち着いたのを確認すると、リビングから水を持ってきてくれた。
「…口の中気持ち悪いだろ。うがいしとけ」
「………うん」
情けないな、こんなによくしてもらって。
自分が心のまま小さくなれたらどんなに良かっただろう。
俺がうがいをしたのを確認すると、柊君は俺を立ちあがらせてリビングに連れて行った。
そうして、ソファーに俺を横たわらせると、その下の床に座り込む。
「ごめん、家主が床になっちゃった」
「余計なこと気にしてんじゃねえよ。さっさと気分良くしてくれたほうが助かる」
「でも……」
「でもじゃねえ。――オマエは、自分が思ってるほど強くないんだ。自覚しろ」
断定だった。バッサリと言いきられ、喉が震える。
このまま泣いてしまいそうになったけど、涙をグッとこらえて何でもない風を装った。目の上に腕をのせると、自嘲気味に呟く。
「……強がることも、ダメなのかな」
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