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思わず俺が聞き返すと、ジンさんはポケットの中からチケットを取りだした。映画の前売り券で、きちんと4人分用意されている。
「映画の前売りやるから、4人で行って来いよ。それから雰囲気をみてそれとなく離れるなり、それなりの食事に行ってやったりしな。金は俺とアヤトで払うから」
「そこで俺を使うのかよ!」
アヤトさんが嫌そうにジンさんの腕を叩いているが、ジンさんは気にせずに笑っている。
どうしようか、と柊君を見れば、柊君はチケットをゆっくり自分の方に引き寄せた。
「…正直、あいつらがどうとか心底どうでもいいんですけど、この映画見たかったんですよね」
「ツンデレか、オマエは。…セリだって、仲いいカメラがどうなっていくか気になるよな?」
「え、…その」
「最近あまり遊べてないみたいだし、奢ってやるから自分も楽しんでくればいい。別にデートって言ったって、そのままずっと遊んで帰って来たっていいから」
ジンさんの言葉に、俺はますます断ることができなくなってしまう。
仕方なしに前売り券の一枚を手に取ってみると、俺が気になっていた映画で、行きたい欲求が高まってしまう。
―――でも、デートって……
二人のデートを邪魔してしまうことにならないだろうか。それに、4人で行くということは、必然的に俺は柊君とセットになってしまうわけで。
「……柊君は、いいの?」
「はぁ?何が?」
「だって、二人ずつに分かれたら、俺と一緒に回ることになるし」
「今更そんなこと気にしてんじゃねえよ。むしろあの二人の間に1人で入らないといけなくなることの方が嫌じゃねえか」
「―――そっか…」
「じゃ、決まりだな」
ジンさんはそういうと、俺たちにチケットを渡して来た。そうして、ニヤッとワイルドな笑みを浮かべて膝を叩いた。
「ま、試験頑張ったお前らに選別だ。楽しんで来い」
「先輩面してんじゃねえよ」
「先輩なんだからいいじゃねえか」
「オマエら先輩の優しさらしいから、報告とかは一切しなくていいから」
「報告はしろよ」
「やっぱ自分のためじゃねえか」
アヤトさんのツッコミに、ジンさんは楽しく笑うばかりで、『この話はやめ!』と最終的にははぐらかしてしまった。
俺はその様子を見ながら、楽しみに思いつつも不安でいっぱいだったのだった……
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