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「―――お待たせしました、ナオ、帰ろうか」
「うん。―――それじゃ、セリさん本当にスイマセン」
「いいよ、また今度誘うね」
「はい」
そうやってナオ君と話していると慶太がやってきて、ナオ君を連れて行ってしまう。
俺とナオ君の関係の誤解は解けたが、未だに俺をライバル視しているきらいのある慶太である。
俺たちが話しているといい顔はしなかったし、こうして連れて行ってしまうこともざらだった。
「…すいませんね、セリさん。先約なもので」
「申し訳ないなんて思ってないくせに……」
ナオ君を先に帰らせて、わざとそんなことを言う慶太にむくれて見せる。二人の仲を応援するとはいったものの、こんなにあからさまに敵意を向けられては一言いいたくなるものだ。
「1人でDVD見るのが寂しいなら俺が今度相手してあげますから」
「別にいいし。ナオ君に置いてかれるぞ」
「強がらなくてもいいのに」
わざとらしく、勝ち誇ったように笑う慶太に、むっとしながらもそれ以上は言わなかった。
ここで話している間にもナオ君が帰ってしまう。
さっさと追いかけろよ、そんな意味を込めてため息をつくと、慶太は『失礼します』とだけ言って去ってしまった。
「………かえろ」
なんだか無駄に疲れてしまって、俺はとぼとぼと家路につく。
「なんだ、またセリ1人かよ」
「ジンさん」
そんな途中、ジンさんに声をかけられ、俺はエレベーターの前で立ち止まる。
振り返ってお辞儀をすると、ジンさんは楽しそうに笑った。
「あいつら抜け駆けかよ。……ったく、これから夕食って言ったのに」
「すみません、聞いてないんですけど」
「あぁ?セリは強制だから出欠確認なんかするかよ」
あんまりないい方に呆れながらも、なんだかおかしくて笑ってしまう。
「俺の出席は決定事項なんですか?」
「当たり前だ。最近オマエがメシ食ってるところ見てないからな。痩せてきてるしちったぁ太れ」
「ちゃんと食べてますって…」
「そのあと吐くようじゃ食事をしたって言わないんだよ」
正論を言われ、俺はグッと言葉に詰まる。
あの拒食症から、俺はストレスがたまるとすぐに食が細くなってしまう。慶太の敵意にさらされているのが結構堪えているようで、最近は一日一食が当たり前だった。
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