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―――はっと目を覚ませば、目からたくさんの涙が溢れていた。

「……あ、」

起き上がって、はらはらと流れる涙をぬぐうように頬を撫でる。随分長く涙を流していたようで、出した声がかすれていた。

懐かしい夢を見たせいだろうか。

昨日、柊君にいわれた一言が、意外と堪えているのかもしれない。

泣かないと思っていても、寝ている間はどうしようもないようだ。

「……どうしよう、撮影なのに」

泣き腫らした酷い顔で撮影に行くこともできず、俺は慌てて洗面場に行く。顔を洗うついでに目を冷やしていると、冷静な自分になることができた。

「―――大丈夫、『俺』は大丈夫…」

そうやって言い聞かせていること自体、弱さのあらわれかもしれない。

でも、何でもないようにふるまうことは、昔から俺のちっぽけなプライドだった。

「うん―――頑張れるよ」

そういいきかせて、鏡の自分に触れる。手が触れた俺の顔は、昔のように不細工ではなかったけど。

頼りなさげに笑う姿が、昔の自分にダブって見えて少しだけドキッとした。

だけど、俺は気づかないフリをしてもう一度笑ってみたのだった。




「―――ナオ君、今日言ってたDVD借りたんだけど、うちに見に来る?」
「スイマセン、今日は先約です…」

―――あれから変わったことといえば。

ナオ君の付き合いが悪くなった。

撮影の後に誘うと、以前は大体オッケーをもらえていたのに、最近はこうして断られているのだ。

理由は、慶太と約束しているから。

慶太のアプローチは分かりやすかった。いろんなことにナオ君を誘っているし、一緒にいるだけでとても楽しそうだ。

事情を知らないジンさんたちも『アイツラいつくっつくかな』なんてニヤニヤしながら見ているし、隠す気が無いのかもしれない。

基本的にスタッフたちに偏見はないようで、陰ではどんなふうに言っているかは分からないが、おおむね慶太を応援する姿勢のようだ。





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