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Side 飛鳥



綺麗になりたい、と心の底から願った。

そうして行きつく先は、ダイエットで。

卒業式の次の日から、僕のダイエットは始まった。

お菓子はすべて捨ててもらい。朝と晩に二回ジョギングに行って、ご飯の量も少しずつ減らしていって。

食べなくなっていく僕に両親は心配そうにしていたけれど、僕のしたいようにさせてくれていた。

「……痩せてない」

それなのに。

鏡に映る自分は相変わらず不細工で、僕は自分の頬の肉を引っ張った。

今まで太っていた分、簡単には痩せなくて。少し頬の肉が減ったかな、とは感じてもとても理想的とは言えなかった。

だから、ますますダイエットをきつくして。

ついに、夕飯は食べなくなった。そうして、昼ごはんも食べなくなった。

朝ご飯は家族みんなで食べているから食べていたけど。

いや、実際は食べるふりだけしていたけど。

「……うっ、ぉぇ……っ」

朝両親が仕事に行くのを見送ると、真っ先にトイレに向かい、食べた物を吐きだす。薬局でこっそり買ってきた下剤を使って無理やり下したこともあった。

そんな僕に、親は良くケーキを買ってきた。

「ケーキ、好きでしょう?お願い食べて?」

うん、大好きだよ。

食べて、といわれて拒否できるほどの精神は持ち合わせてなかった。だけど、かつての好物は思わず泣きそうになるほどおいしくて。

ついつい、食べ過ぎてしまって。

「………っ!!」

その事実に気づいて、まっすぐトイレに向かって吐きだして。

「……う、ぅっ」

何で僕はこうなんだろう、自責の念に駆りたてられながら、無くなってしまった大好物を思って涙を流す。

「…ねぇ、飛鳥」

そんな僕を、お母さんが待ち構えていて、僕は身がまえた。

「ごめんなさい、食べられなくて」
「どうして、そんなに苦しんでいるの―――?」

お母さんは、そういいながらはらはらと涙をこぼし始めた。僕の前に膝をつき、縋るように抱きついてくる。

「お願い、そんなに苦しいなら整形して。このままでは、あなたが死んでしまうわ。そうしたら、私、私―――っ!!」
「お母さん…っ」

お母さんの背中を撫でながら悲鳴を聞き、僕はさらに涙が溢れた。

悲しませてごめんね。僕は弱くて、どうしようもないから。

後悔してばかりだけど。

もう、後悔しないように、終わりにするから。

整形して、すべて終わりにしてしまうから―――





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