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『柊正人君へ
たくさん嫌な気持ちにさせてごめんね。
でも、柊君と朝挨拶出来るだけで、一日ずっと楽しかった。幸せな気持ちになれた。
柊君には迷惑でしかなくても、僕はずっと、柊君に勇気をもらってました。
今までありがとう。柊君は、僕の憧れでした。
芹沢飛鳥』
「―――――っ!」
喉がひきつれて、声が出なくなる。なんだか泣いてしまいそうになった。
恨みごとなんて、一つも書いてなかった。
ずっと、酷い言葉を投げてきていたのに。恨まれて当然だと、思っていたのに。
「……芹沢、」
ブスカじゃない、本当の彼の名前を呼んで、また心がざわついた。
ざわざわざわざわ、本当に落ち着かない。
だから、芹沢が嫌いだった。
俺には笑ってくれないくせに。俺ばっかり、こんなふうに落ち着かなくて。
でも、認めてしまうしかないのかもしれない―――
「………芹沢が『特別』だから、特別落ちつかなくなるんだ」
誰よりもずっと、特別な感情を抱かせる芹沢。
何で芹沢なんだ、とずっと疑問だった。何もかも恵まれている俺が、なぜあんないじめられっ子なんだと。
恵まれて、さらに何かを望むことすら『傲慢』と表現されても。
あの笑顔だけが、俺を惹きつけて離さなくて。
でも、それは当然だったのだ。芹沢が特別で、あの笑顔が何よりも大切だったから――――
「…今更気づくなんて、馬鹿みてえ」
気付いた途端、失恋だ。
もう芹沢は違う大学に進学してしまっているし、接点なんて残っていない。
それでも、もし。
またチャンスが現れたなら。
俺は絶対、逃したりなんかしない――――
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