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Side 慶太
―――先輩が、どこか遠慮しているのは分かっていた。
好きだと自覚した後も、なんとか遠慮をといて欲しいのに必死で。
どうして、そんな風に遠慮するのかを考えていた。
考えてみれば当然かもしれない。散々いじめられて、自分に自信が持てるわけがないのだ。
俺がどんなに言葉を尽くしたところで、『僕なんて』と卑屈になってしまうのだろう。
今まで出会ってきたほとんど人にいわれてきた言葉が、俺一人の力で変わるわけがない。
だから、俺は自信を持って欲しくて。
相変わらず近寄ってきたしぶとい奴らの中から、何となく人のよさそうな奴らを選んで先輩とあわせることにした。
自身を持って欲しくて。あなたは愛されるべきなんだと、自覚してほしくて。
おせっかいかもしれないけれど、結局俺は自分の方を向いて欲しかっただけで。遠慮してほしくないし、もっといろんな顔を見せてほしかっただけなのに。
だんだん元気がなくなっていく先輩の笑顔に、俺はますます焦るばかりだった。
そうして、先輩の卒業式がやってきた。
先輩と、これから毎日会えなくなる。携帯の番号も、進学先も何も知らない。先輩が自分のことを語らないせいもあるけど、俺はとても焦っていた。
「よ、慶太」
そんなとき、仲良くしていたヤツに声をかけられた。
正直今は話しかけてほしくなかったが、とりあえず話だけは聞こうと『何?』と返す。
「あの先輩、見つけた?」
「いや、まだ」
「残念だったな。さっきもう帰ったみたいだけど?俺見かけたんだ。まだ追えば間に合うかもだし、会いに行けば?」
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