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―――そうしてやってきた卒業の日。

僕が受かった大学は、僕以外誰も受かっていなかったので大学からは本当にお別れである。勉強だけは出来ていたから、こうなってしまって少し寂しい気もするけど。

優しくしてくれた人に、お礼がしたいと思った。

そうしてまず思い浮かんだのは、柊君だった。

挨拶してくれていたこと、それが朝の幸せだったこと。柊君には嫌われてしまったけど、僕は柊君にあこがれていて。

思い切って、手紙を書いてみた。

僕なんかにはもう会いたくもないだろうし、そっと下駄箱に入れておく。こうしているとラブレターみたいだけど、気持ちを伝えるっていうのでは一緒かもしれない。

そうして、次は慶太とその友人たち。

偽りの優しさでも、僕に話しかけて、笑ってくれて嬉しかった。

それが慶太の気を引くためだったとしてもかまわない。あの優しい空間にいることを許してくれてありがとうって言いたかった。

在校生の中をさまよいながら、慶太を探す。慶太の傍にみんないるだろうから、目立つ慶太をまずさがそうと走り回った。

「慶太…っ」

やっと見つけた慶太は、やっぱり友達と話していて。思わず笑顔になりながら彼の傍に向かおうとすると、慶太は口を開いてこういった。


「―――あんな不細工で気持ち悪いヤツ、誰が相手にするかよ」


―――え?

いなくなって清々する、友達とそう笑い合う彼に、一瞬何が起こったのか分からなかった。

それでも、言葉が頭に入ってくると、タガが外れたように目から涙が溢れてくる。

僕は、逃げるように家に走った。

「うっ……うーっ!!」

ベッドに飛び込むと、僕は枕に顔を押しつけながら、声を押し殺して泣いた。

こんな顔でなければ、自分の顔を手で覆うとぐしゃぐしゃに泣き続けた。顔に爪を立て、頬を引っ張る僕はさぞかし滑稽だっただろう。

そんなことをしたって、変わるわけないのに。

目が覚めたら、綺麗になっている。そんな奇跡、ありえない。変わらないのに―――変わりたい、と強く願った。

僕が変われば満足なの?僕が学校に行かなければ満足なの?

答えは、いじめっ子にしか分からない。

だけど―――僕はもう嫌だった。

唯一の支えさえ失って。

いや、勝手に支えられているような気になって。勝手に失望したのは僕だ。慶太だけは僕に優しくしてくれる、他の人とは違うなんて、何で思ったりしたんだろう。

「もういやだ……やだよ…っ」

僕が学校に行きつづけたのは、めげないで頑張り続けたのは。

ただ、友達と一緒に笑いあえるような、当たり前の『幸せ』が欲しかっただけだったのに―――


それすらも叶えられないなら―――こんなコンプレックスまみれの顔もからだも、いらない。





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