20
―――僕の高校生活は、そうして終わりを迎えようとしていた。
結局、僕は柊君と仲直りすることもできず、クラスは離れてしまった。そして、いじめはどんどんエスカレートするばかりで、僕は慶太と一緒にいる時間が一番の幸せだった。
だから、必然だったのかもしれない。
僕は、慶太を好きになってしまったのだ。
自覚してからはドキドキがとまらなかったけど、慶太と一緒にいられるだけで幸せだったし、告白しようなんて思えなかった。
僕なんかに告白されたって、迷惑だし…
卒業まで、傍にいさせてもらえればそれでいい。慶太がいてくれただけで、僕はだいぶ救われたから。
そう思っていたのに―――
「―――あ、飛鳥先輩」
「こ、こんにちは…」
―――いつからだろうか。中庭に慶太以外の人がいるようになった。
それは女の子だったり、僕と同い年の男子だったり。でも、一緒にいる人はみんな慶太と親しげで、僕は大人しく気配を消すことしかできなかった。
慶太がいると、とても優しい空気があたりに満ちる。僕にも挨拶をしてくれたり、僕が作ってきたケーキをみんなで分けたりしたこともあった。
だけど、先に僕がいて、慶太がまだいないときなどは風当たりがきつかった。
「先輩、いい加減慶太から離れてくださいよ」
「俺たちが優しくしてやってるからって調子乗らないでくださいね」
「慶太くんが傍にいなかったら、本当は話しかけたくもないんだから」
―――分かってる。僕は、分かってるから。
何度耳をふさぎたくなっただろう。慶太がいるときは優しいから、それがまた怖くてしょうがない。
僕は、誰かに優しくしてもらえるような人間じゃないんだ。だけど、一瞬でも優しくしてくれるみんなの優しさに甘えてしまって。本当にずるくて弱いんだ。
慶太も、心の底で本当はそう思っているんじゃないかと不安だった。
だけど、不安を感じても、慶太を疑うことはなかった。慶太は僕の不安の分だけ優しさをくれて、時々抱きしめてくれたりしたから。
他人の体温に癒され、たくさん勇気をもらって。
まだ頑張ろうとする僕を、慶太の友達は『見苦しい』とか『しぶとい』とか表現したけど。
卒業式の、最後の最後くらい気持ちを伝えたい。
僕は、卒業式にたくさんの感謝をこめて、慶太に告白しようと思ったのだ―――
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