19
「ごめん、なさい―――っ」
冷たさに震えながら、僕はみじめに土下座をした。
「ははっ、マジでやってるぜコイツ!」
「きたねー!」
「馬鹿じゃねえの!?プライドねーのかって話だよな!」
「う、うぅ――――」
クラスメイトの罵声とともに、髪の毛を引っ張られ、背中をしたたかに殴られる。
絶対に、泣きたくなかった。
僕は、こんなことでへこたれたりしない。ちっともこたえてないんだ。
だって、こんな僕でも、傍にいることを許してくれる人がいる。
僕を、信じてくれている人がいる。
僕ならできると、頷いてくれた人がいる―――
「柊君、一昨日は、本当にごめんね。僕、本当は―――」
「―――うるせぇな」
チョコレートアレルギーなんて、僕の一番の汚点だ。
いつも以上に不細工になって、かゆみと痛みで人に会うことすらままならなくなる。
そんな状態になるのを恐れて、僕は柊君の気持ちを台無しにしてしまった。自分を守ってしまった。
それを僕はすごく後悔していて、気持ちだけでも、伝えたくて。
柊君に謝ろうとした言葉を遮ったのは、柊君自身だった。
「グダグダいい訳してんじゃねえよ。―――俺、オマエが一番大嫌い」
「―――――――っ」
喉が、震えた。
言葉がでなくなって、静かに涙が溢れてくる。
―――もう、駄目なの?
もう、あの笑顔が僕に向くことはないの?もう―――柊君にあいさつ出来ないの?
「―――うぁぁーっ!!」
クラスメイトと柊君が教室から出て行って、僕は声にならない叫びをあげながら泣いた。
大事な人を、傷つけてしまった。
大事な人に、嫌われてしまった。
僕は、馬鹿だ――――
胸を締め付けられるような痛みに、僕はその場を動けなかった。
―――後日、慶太にだけはこのことを話した。
信じてもらえたのに、期待に応えられなかったことが、恥ずかしくて申し訳なかったけど。
慶太は、僕の頭を軽く撫でてくれて。
何も言わない、その空間が、慶太の答えで。
僕はまた、涙を流したのだった。
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