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結局、授業がずっと移動教室だったこともあって話しかけられなかったけど、放課後にチャンスはやってきた。

ホームルームが終わって、みんなが帰るとき。出来る限り嫌な思いをされないように、不細工な僕はまっすぐに帰っていたけど。

「柊君、」

僕は、柊君に声をかけた。

柊君は、クラスの友達と笑っていたけど、僕を見たとたんとても冷たい顔になった。その表情にすくんでしまいそうになったけど、僕はまっすぐにシュークリームを差し出す。

「…この前のこと、謝りたくて」
「この前っていつ?」
「…おとといの、けー」
「ってゆうかさぁ」

一昨日の、ケーキを受け取れなかったことだ、と言おうとした言葉は、柊君の大きな声でさえぎられる。

僕がびくっと身体を揺らすと、柊君は立ちあがって僕を壁に押し付けた。

「―――他に謝ることがあるだろ?今まで優しくしてやってた俺に、感謝の言葉とか無いわけ?」
「―――生まれてきて、ごめんなさい、とか?」
「不細工が同じ空気吸ってごめんなさいとか?」
「そーそー」

周りで見ていたクラスメイトに茶化すようにいわれ、僕は俯く。柊君が何も言わない辺り、柊君もそうして謝って欲しいのだろう。

「だいたいさ、これ何?モノで釣ろうっていう根性が信じられないよな。――オマエ、性格もブスなんだな」
「そんな…つもりじゃ……っ」
「じゃあこれは何なんだよ!誠意見せるなら土下座でもしろ!」
「―――っ」

目の前で柊君に怒鳴られ、体が震えた。

カタカタと体が震え、もっていたケーキの箱が足元に潰れる。

「ほら、早くしろよ。誠意が見れれば考えてやるから」
「う……っ」

僕は、震える体で、リノリウムの床に膝をつけた。

冷たい床、冷たい身体。だけど―――注がれる視線が、もっと冷たい。





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