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……あんなに持ったら、絶対コケるだろ………
俺より小さい身長で、ふらふらとおぼつかない足取り。
「あの、手伝いましょうか?」
思うより早く、俺はそう言っていた。
自他共に認めるお節介がつい出てしまい、隣でメイクさんも驚いたようにしている。
相手も、俺が自分に向けて言っていると分かったのだろう。
ゆっくり振り返って、こうボソリと呟いた。
「――大丈夫です。放っておいてください」
黒髪の、野暮ったい前髪で、顔は良く見えなかった。
それよりも、予想外に辛辣な言葉が返ってきたことに驚く。
「――そうですか、気をつけて下さいね」
俺がなんとかそれだけ言うと、相手はそのまま何事も無かったかのように去ってしまう。
「なぁに、アレ。感じ悪ー」
一部始終を見ていたメイクさんが、彼が去ったのを確認して呟いた。
メイクさんは俺より少し年上くらいでまだ若く、明るくサバサバとした性格で、いっそ清々しい物言いをする。
同意しかねる内容に苦笑しながらも、否定はせずに再び歩きはじめた。
「足止めしてしまってすいませんでした」
「いいのよ別に。休憩時間は長いし」
「ありがとうございます」
「そのかわり部屋で髪弄らせてよ。セリちゃん綺麗なのに不精だから見てらんないわ」
「あはは」
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