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心配させてごめんね。でも、僕なんかを心配してくれて嬉しいよ。
安堵と、申し訳なさと。優しさに触れると涙腺が弱くなってしまう気がする。慶太の腕の中で、僕は静かに涙を流した。
「ぼく、柊君に…酷いこと言っちゃった……っ」
「うん、ゆっくりでいいから、話してください」
こんな僕に、泣く資格なんてない。
でも、僕の情けないところごと、慶太は抱きしめて話を聞いて、昼休みの間中ずっとそうしてくれていた。
傷つけたのは、僕で。言葉が足りなくて、悪かったのも僕で。
「僕、チョコレートアレルギーなんだ…っ、柊君が、ケーキくれて、それが、チョコレートで、それで」
「食べれなくて、断った?」
「うん……っ、でも、うまい断り方が分からなくて、『いらない』って、一番酷い言葉……っ」
「そっか……辛かったね」
まるい背中に沿って、慶太の腕が流れる。宥めるように背中を撫でられると、さらに苦しくなった。
僕は、辛くなんてない。辛いのは、柊君だ。
僕の胸を締め付ける感情は、後悔で。慶太もそれが分かっているからこそ、余計なことは言わない。
「後輩に慰められるなんて、情けない…」
「ケーキのお礼です。…これから先輩が頑張れるように、おまじないです。俺は先輩ならできるって、信じてますから」
僕は、まだ頑張ってもいいのだろうか。
慶太の言葉に、僕はそっと顔をあげた。
「いっつも我慢してるんです。たまには、思いっきり自分の気持ちいってもいいと思いますよ」
柊君は優しい。でも、慶太も優しい。
僕は、幸せ者だ。
背中を押してもらえて、勇気をいっぱいもらえる。
頑張っていい、いてもいいんだって、元気をもらえる。
「うん…っ、ありがとう」
昼休みが終わって、僕は慶太からもらった元気を胸に教室に戻った。
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