13
Side 飛鳥
―――綺麗、って言ってくれた。
慶太みたいにカッコイイ人が、お世辞でも嘘でもなくて綺麗って。
大嫌いな自分を、ちょっとだけ受け入れたくなったんだ。
別にお世辞でも嘘でも、いいんだ。
でも、すごくすごく嬉しかったんだ。
嬉し過ぎて、僕は馬鹿になっていたんだ―――
―――投げつけられたケーキに、言葉が出なかった。
「――んだよ、ちょっと優しくされたからって調子乗ってんじゃねーよ」
目の前でそういったのは、憧れの柊君。
当然だ。柊君がくれたケーキを跳ね退けてしまったのだから。
優しくて、憧れの人。
たくさん勇気を貰って、慶太と仲良くなれたのも彼のおかげだ。
毎朝挨拶をしてもらえるだけで、幸せだった。
それなのに―――
教室を出ていってしまった柊君を追うこともできず、僕はぐしゃぐしゃのケーキを持って立ち尽くした。
クラスメイトは、出ていった柊君を追い掛けるように教室を出ていく。
涙なんて、出るはずもない。
どう考えても、言葉が足りなかった僕が悪い。
柊君を思うと苦しくて、僕は帰った。
とぼとぼと歩きながら、いまさらながら涙が出てきた。
なんで僕は馬鹿なんだろう。どうして、もっとうまくやれないのだろう。
こんな自分が、大嫌い。
「……うっ、ごめんね柊君…ごめんね…っ」
家に帰って、チョコレートケーキを食べながら涙を流した。
謝らなきゃ。許してもらえなくても、謝らなきゃ。
ケーキを作ろうかな。シュークリームとか好きかな。
僕はそんなことを考えながら、泣きながら眠りについたのだった。
[ 57/140 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
TOP