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Side 飛鳥



―――綺麗、って言ってくれた。

慶太みたいにカッコイイ人が、お世辞でも嘘でもなくて綺麗って。

大嫌いな自分を、ちょっとだけ受け入れたくなったんだ。

別にお世辞でも嘘でも、いいんだ。

でも、すごくすごく嬉しかったんだ。


嬉し過ぎて、僕は馬鹿になっていたんだ―――



―――投げつけられたケーキに、言葉が出なかった。


「――んだよ、ちょっと優しくされたからって調子乗ってんじゃねーよ」


目の前でそういったのは、憧れの柊君。

当然だ。柊君がくれたケーキを跳ね退けてしまったのだから。

優しくて、憧れの人。

たくさん勇気を貰って、慶太と仲良くなれたのも彼のおかげだ。

毎朝挨拶をしてもらえるだけで、幸せだった。


それなのに―――


教室を出ていってしまった柊君を追うこともできず、僕はぐしゃぐしゃのケーキを持って立ち尽くした。

クラスメイトは、出ていった柊君を追い掛けるように教室を出ていく。

涙なんて、出るはずもない。

どう考えても、言葉が足りなかった僕が悪い。

柊君を思うと苦しくて、僕は帰った。

とぼとぼと歩きながら、いまさらながら涙が出てきた。

なんで僕は馬鹿なんだろう。どうして、もっとうまくやれないのだろう。

こんな自分が、大嫌い。

「……うっ、ごめんね柊君…ごめんね…っ」

家に帰って、チョコレートケーキを食べながら涙を流した。

謝らなきゃ。許してもらえなくても、謝らなきゃ。

ケーキを作ろうかな。シュークリームとか好きかな。


僕はそんなことを考えながら、泣きながら眠りについたのだった。





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