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―――なぜ、芹沢は受け取ると思っていたのだろう。

優しくしてやったとか。

そんな見下した考えでいたのなら、いじめをしていたヤツと同じだ。

口にだすかださないかの違いだけで。

「見ているだけも、立派ないじめ」とは良く言ったものである。

芹沢は、俺達の器を映す鏡で。

――俺は、俺が思っているほど善良な人間ではないと気付かされて。

人見知りで、人に挨拶ができないほど自信を無くしていた芹沢が、俺には自分から挨拶をしてきてくれていた。

その意味を、軽視し過ぎていた。

ニセモノの優しさにも、芹沢は確かに信頼を返してくれていたのに。

それすら、自分で壊した。

「――よ、言うじゃん」
「見ててスカッとしたし」
「最近ブスカ調子乗ってたもんな。お前言って正解だよ」

明らかに間違えた俺を、褒めたたえるクラスメイト。

狡い俺に、相応しい人間が集まるのは、必然なのかもしれない。

狡くて、自分は差し出さないクセにひたすら欲しがる。

そうして、手に入らないものがあることにも、気づいてしまった。


「―――畜生……ッ」

叫び出したい。

誰か、俺を責めればいいのに。

どうしても俺のものに出来ないと分かっても、誰かの物になるのはこんなに悔しい。

もういい子のフリはやめだ。

独り占めだってしたいし、ほんの一瞬じゃ我慢できない。

俺に向かないなら、誰にも向かないで欲しい。

中里になんかやるものか。俺のものにならない笑顔など、俺が消してやる。

そう考えて、心が落ち着くなんて。

隠しきれない黒い感情が混ざり合い、引きはがせなくなっていく。

―――あぁ、俺は本当に、ただのいい子なんかではなく、歪んでいる。





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