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モデルというのは、意外と楽しいものだ。


そう気づいたのは始めて一ヶ月経った頃だ。


きらびやかな世界。まばゆいフラッシュ。

現実世界の魅力を詰め込んだような世界で、俺はその瞬間をカメラに映される。

流行の最先端を行くファッションを、振り返ってみた姿や、とびきりの笑顔と共に読者に届ける。

「はい、セリちゃんお疲れ」
「お疲れ様でしたー」


今日の最後の一枚を取り終えると、俺はみんなに挨拶して現実世界に帰ってくる。

「ポラの確認してくるから、メイク落として着替えてきてもらえる?」
「はい。ちょっと抜けてきますね」
「ゆっくりでいいよ。じゃーそれまで休憩ー」

カメラマンさんの間延びした号令とともに、スタッフが行動を始める。

俺が契約したのは、20代男性向け雑誌『MEN'S WILL』だ。

未来だとか意思だとか、そんないろんな意味が含まれているらしいが、売上は上々で、女性読者もいるらしい。

俺は買ったことがなかったが、学生時代にクラスメイトが読んでいたのを見たことがある。

そんな雑誌のモデルになるのはどこか夢のようだったが、慣れてきてしまえばこれほど幸せなことはない。

カメラマンさんに言われた通りメイクを落としに控室に向かっていると、廊下の辺りで沢山の器具を持っている人とすれ違った。





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