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―――次の日。起きても僕はやっぱり不細工だった。
「……いい加減夢見るのやめようかな」
どこかのおとぎ話みたいに、朝目が覚めて鏡を見ればとてもイケメンになっている、そんなことは起こるわけ無いとは知っているけど。
今日は身体も醜いことになっていて、いつも以上に大きなため息が出た。
そうして、いつものように学校へ着くと、いつものようにいじめ対策を行い、教室の席で気配を消しておく。
「あ……」
目立たないように、それだけを信念にじっとしていると、柊君が登校してきた。
「柊君、お、おはようっ」
僕の席を彼が通り過ぎる時、僕は思い切ってそう言ってみた。
「あ、おはよう」
柊君は、僕を振り返ってそういうと笑ってくれた。
思わず、もう一回『おはよう』というと、『芹沢変なの』と笑いつつも、おはようとちゃんと返してくれた。
―――やっぱり柊君、優しいな……っ
嬉しくても胸がギュッとなって泣けてくるのか、と思うと、なんだか嬉しかった。胸がぽかぽかして、じんわり身体が暖かくなってくる。
今日は人生で一番幸せな朝かもしれない。大げさだけど、そんな風に思えた。
……柊君に元気もらったんだ。頑張ってみよう。
柊君の優しさに助けてもらった僕は、その日の昼休みに中庭に行ってみた。
「――――あっ!」
すると、昨日と同じ格好で中里が寝ようとしているところだった。
僕は急いで駆け寄ると、『中里っ』と声をかけた。
「あのっ、昨日はありがとうございました」
「………誰?」
中里の答えは、半ば予想通りだった。僕のことなんてその辺の雑草と一緒で、邪魔だったからどけたけど、すぐに忘れてしまうような存在なのだ。
でも、期待していなかった分立ち直りも早く、僕は息を吐くとさらに続ける。
「二年の芹沢飛鳥です。昨日、クラスメイトにあそこで絡まれていたところを助けていただき、ありがとうございました」
「………別に、あんたを助けたつもりないんっすけど」
「でも、助かったのは事実です。なので、気持ちだけ受け取ってください」
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