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「―――テメエ何チクッてんだよ!」
「ぐっ」
―――その日の放課後。僕は数名のクラスメイトに呼び出されていた。
原因は、昼休みのこと。
生徒指導室に呼ばれた理由は、僕の机にいたずらをするために学校の備品が使われたからだ。
学校の備品が頻繁に減っては、先生たちも不思議に思う。そうして、使われ先を調べていると、僕に行きあたったというのだ。
『正直、オマエがいじめられているのは何となくわかる。だから、言ってくれ芹沢。誰がこんなくだらないことをしているのかを』
「―――それで俺たちをうったんだろうが!」
「ほんとブスカは最低だよな。すぐに泣きつく弱虫だ」
「う、ううっ」
服の下を殴られ、僕は短く悲鳴を上げ続ける。見えるところに傷をつくらないのがなんとも陰湿だ。
僕も、あの机と同じ。
何度も傷つけられて、消えない傷もたくさんあって。
ただ、それが心だから、誰にも見えないだけで。
「……僕、言ってな、いっ」
「はぁ?じゃあ何でホームルームがあんなことになるんだよ!」
どなり散らすクラスメイトに、僕は涙が滲みそうになるのを耐えながら思った。
嘘じゃない、僕は結局担任に何も言わなかったんだ。
昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴るまで、僕は一言も話さなかった。『これは僕の問題だから』とい頑なに首を振って。
『……分かった』
そう言って僕を教室に送り出した担任は、放課後のホームルームにクラスの前でこういった。
『このクラスで、いじめが起こっている』と。
それから続いた説教には、僕らのことを含ませたような言葉もあって。彼らが誤解してしまうのも無理はないんだけど。
「……本当にムカつくよな」
「いっそ学校来れないようにしてやろうぜ」
「はぁ?無理無理。コイツこんな恥ずかしい顔のくせに学校来るんだぜ?こんな恥知らず、世界中探してもいないって」
「こんな不細工は宇宙にもいないけどな」
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