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side 柊
―――馬鹿って言うのは、本当に死なないと治らないのだろか。
アイツの本質は、結局ブスカのままで。いくら否定しようとも、不細工だったあの頃の感覚が、アイツを臆病にして。
傷つくのが怖くて、結局傷つかないうちに逃げようとして。
だから、慶太ともかみ合わないのだ。
「―――本当に、馬鹿だよな」
「先輩それ喧嘩売ってるんですか」
目の前にいる慶太に言われ、俺は小さく笑った。
―――次の日の大学。実は同じ大学に通う慶太と偶然食堂で会い、流れで一緒に食事をすることになったのだが。
考えるのは、昨日のブスカのことばかり。
否定され続けると、相手の視線ばかりに目が行って、本当の自分を見失ってしまうのかもしれない。
そうして、自分の醜い感情に蓋をしようとする。
いらない感情だと、そのまま捨てようとする。そんな感情をもつ自分では、ますます嫌われてしまう、と悪循環に陥っているのが見え見えで呆れてしまう。
俺からしたら、怖がるのもたいがいにしろといいたくなる。俺なんて、アイツの前でいつもそういう気持ちを味わっているというのに。
本心を見られやしまいか。どんなふうに相手に映っているのか。
そういうのを気にしてしまうのは別に卑しいことではない。相手を『特別』だと思うのなら当然だ。
そう割り切って、俺はずっと楽になれたから。
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