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慶太が何かをしたわけではないのに、みじめな気持ちになってしまう自分が嫌でしょうがない。

今日は二度目の失恋をしてしまった。

高校の卒業式で諦めてしまえば良かった感情。踏ん切りがつかなくて、ずるずると引きずってしまった結果がこれだ。

――でも、これはきっちり蹴りをつけるのにいい契機だ。

『僕』は不細工だから、という理由でふられていた。『俺』はあの頃よりずっとマシな見た目になっているつもりだったけど、それでもダメだったのだから。

相手がナオ君なら、俺は応援できる。

ナオ君に幸せになってほしいし、他でもない慶太が選んだ相手なんだから。

「―――ふられてやんの」

そんな風に考えていると、柊君がやってきた。傷をえぐる、からかうような物言いに、俺はむっとしながら応える。

「のぞき見とか、趣味悪いですね」
「オマエを慶太が呼びだす理由がないからな。何かおかしいと思ってついてきただけだ」

何でもない風にいいながら、柊君は煙草を取り出す。つい最近成人した柊君は、ヘビースモーカーというわけではないけれど、仕事が終わると必ず煙草を吸っていた。

ライターで火をつけながら、非常階段に腰掛ける。そのまま腕を引かれ、なぜか隣に座らされた。

「―――傷ついた?」

そうして言われた言葉に、俺は訳が分からなくて戸惑う。

慰めか、それともからかいか。

普段の彼なら、おそらく後者だろう。だけど、あまりに自然な口調で言われ、突き放すことも泣きつくこともできない。

「別に、平気です」

結局、強がることでごまかそうとした。

「だからふられるんだよ」
「なっ……げほげほっ!」

そういうと、柊君は俺に向かって煙草の煙を吹きつける。隣に座っていたせいでダイレクトに煙を受け止め、俺はもろにむせた。

そんな俺にかまわず、柊君は続ける。

「あの慶太も相当馬鹿だけどさ、オマエは救いようがないよ。何でそんなに勝手に終わらせようとしてるワケ?」
「え――――」
「悔しくないの?整形までして綺麗になったのに、慶太が選んだのは不細工。まして、オマエの友達と来た」
「相手がナオ君なら……別に」
「って思ってねえ顔してるんだよオマエは。そういうずるいとこ慶太にばれたんじゃねえの?」





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