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―――それから数日。食事会のこともあってモデル同士で少しだけ仲良くなってきたころ。

「セリさん、ちょっといいですか」
「うん?」

俺は何故か慶太に呼び出されていた。

ちょうど仕事が終わったころで、今回はジンさんがいなかったこともあり、早々とお開きになろうとしていたその瞬間だった。

思い人からの呼び出しに喜ぶべきところなのかもしれないが、慶太の険しい表情を見れば、はっきりいってそんな気分にならなかった。

「ナオのことで話があります」

さらにナオ君の名前が出て、俺は内心戸惑った。

ナオ君に何かあったのだろうか、と思いつつも、大人しく慶太についていく。

そして、人気のない非常階段に呼び出されると、慶太は大人しく口を開いた。

「―――ナオのこと、どう思ってるんですか?」
「え……」

急速に仲良くなった二人。ナオ君のかねてからの知り合いの俺を、慶太が呼びだしている。

これで何を言われているか理解できないほど、俺は鈍くはない。

「俺とナオ君の関係疑ってる?」
「そうです」

まっすぐ、威嚇すらする勢いでいわれ、俺は胸の痛みに気づかないふりをした。

「俺とナオ君は友達だけど、それをわざわざ聞くっていうことは、そういうこと?」
「はい、俺はナオが好きです」

高校時代、嘘でもいいから欲しかった言葉。それが今、面と向かって、でも別の人を思って言われることになるとは。

つまり、俺は恋心を持つ相手から恋仇に認定されているわけで。

俺は慶太に疑われるほど、何か気に障る様な事をしたのだろうか。何が悲しくて、思い人に睨まれなければならないのだ。

いや、何もしなかった結果がこれなのか。

「―――そんなに威嚇しないでも、俺はナオ君に特別な感情はないよ。モデル始めて最初の友達だから、大事にしたいだけ」
「そうですか……」

あからさまにほっとした様子の慶太。それだけ本気なんだと思うと、心の底から笑うことなんてできず。

「―――がんばれ」

張り付けた仮面で、なんとかそれだけ言うのが精一杯だった。





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