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「―――なぁ、アレどうゆうこと?」
「分からない……」

―――その日の会議が終わり、俺は柊君に呼び出されてファミレスにいた。

柊君にも慶太だと分かったようで、会議が終わると問答無用で引きずられてきたのである。

慶太は、俺たちの一つ年下で、後輩に当たる。

大学生になっていたのならおかしくはないが、まさか浜口さんが彼を引き当てるとは思わなかった。

「それに、意外だったんだよね……」
「は?何が?オマエを分からなかったこと?どんだけ自意識過剰なんだよ」
「もう、そこじゃないよ」

帰り際、慶太と目があったが、声をかけられることはなかった。

すれ違いざまも特に目が合うこともなく、完全に忘れられているのだと感じた。

確かに、かつての思い人に気づいてもらえないのは悲しかったが、それよりも気になることがあった。

「慶太がモデルするなんて、思わなかったんだ」

慶太は、昔から人気だった。

でも、柊君ほどではなかった。

―――それは、慶太が嫌いだったから。

慶太は、人を顔で判断する奴が大嫌いだった。

みんながそうだったとは思わなかったけれど、慶太のまわりには慶太のステータスを求める人間がたくさん集まった。

慶太の彼女、というポジションがほしかった女の子や、慶太のモテる恩恵をもらおうと思った男子。

慶太がお金持ちの家の出身だったのもさらに拍車をかけたのかもしれない。

高校で、『僕』と出会った時にはすでに人間不信状態で。

そんな彼だったから、逆に僕は近づけたのかもしれないけど―――

「……あー、アイツが自分の顔で金儲けするとは思えないよな」
「うん」
「アイツにもいろいろあったんじゃね?いつまでも同じだと思うなよ」
「そうだよね……」

俺は頷くと、コーヒーを飲んだ。確かに、俺の顔が変わったように、慶太にも変化があったのかもしれない。

「ってか、そんなにウジウジ気にしてんじゃねえよ。やっぱ昔の男は気になるってか」
「その言い方は無いだろ。俺は別に付き合ったわけじゃないんだし」

むっとして言い返すと、柊君は鼻で笑って『どーだか』と呟いた。

いくら昔のいざこざが解決したとはいえ、柊君は相変わらず冷たい。こんなメンバーで、撮影はどうなるのだろうか。

俺はこれからの撮影を思いながら、小さくため息をついたのだった……。





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