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「ちなみに一応顔合わせは明日になってるから」
「そんなに急なんですか!?」
「しょうがないじゃない、あなたが中間試験で来なかったんだから」
「そうですね……」
そう、俺は後期の中間試験まっただ中である。科目数は少ないが、単位に大きくかかわってくるため気が抜けない。
「……がんばります」
俺はこれからのことを思いながら、小さくうなだれたのだった……。
―――次の日。言われた通りのオフィスに行けば、まだ他のモデルさんたちは来ていないようだった。
何となく柊君の姿も探したが、まだ来ていないようである。
俺は手近にあった椅子に座ると、鞄の中から女性向け雑誌を手に取ってみた。そして、それをそのまま開いて眺めてみる。
昨日本屋で女性向け雑誌を買って研究してみたが、女性のメイクはとても手が込んでいる、というのが率直な感想だった。
まつ毛をつけたり、グラデーションを作ったり。いろんな技術を駆使して綺麗になろうとする姿は尊敬の念さえ抱かせた。
「―――やぁ、こんにちは」
「浜口さん、お疲れ様です」
雑誌を読んでいると、浜口さんが到着したようだ。俺は立ちあがって挨拶をすると、再び席に座る。
「セリさんがお客なのに先に来させてしまって申し訳ないね」
「いいえ、俺が早すぎただけですので」
「そう言ってもらえると助かるよ。ビジネスマンは時間にうるさいから。…ところで、それは今日の研究かな?」
「あ……はい」
雑誌を指さしながらそう言われ、俺は小さく頷く。そして頬を掻きながら言い訳するように付け加えた。
「恥ずかしいんですけど、女性向けのコスメなんて全く知らなかったもので」
「いや、勉強熱心で頼もしいよ。それに、世の中の男性がどれだけ知識を持っているかわからないしね」
「確かにそうですね」
「逆に素人に近い意見が聞けていいんじゃないかな。期待してるよ」
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