5




やんわり断ろうとしたが、柊君はそれ以上追及してくることはなく、あっさりと身を引いた。

あまり本気ではなかったのか、と拍子抜けしつつも立ちあがると、そのままトイレを出ようとする。

すると、柊君もついてきて、さっきの空気が嘘のように霧散していた。

そうして、気がつけばうやむやのまま、その日は終わっていったのだった……。



「―――コラボ!?またですか!?」

―――次の週。事務所の方に呼ばれて行けば、またコラボの話が来ているという話だ。

しかも、今回もまた浜口さんのところらしい。

この前の浜口さんの電話はこのことだったのか、と俺は内心頭を抱えた。

おそらく、また柊君との撮影になるだろう。今度こそ逆鱗に触れなければいいが…。

「そ、またコラボ。浜口さんだっけ?えらくご執心みたいよ」
「そうですか………っ」

ガクリ、とソファーで肩を落とした俺に、女性の社長さんは企画書を差し出してきた。

「しかも、今回はプロデュースかららしいから、かなり長期の仕事よ。今のうちに大学の勉強しっかりしときなさいね」
「はい……」

うなだれながら差し出された企画書に目を通すと、どうやらまだ企画が始動した段階で、実際の販売は来年春以降になるらしい。

女性向けコスメを、男性目線でプロデュースする、という企画らしく、俺と柊君、そして数名のモデルが呼ばれていた。

「コスメなんて、分からないですよ…」
「そんなのあんたが普段撮影で塗ったくられてるのと大差ないわよ。今回はジンも参加するんだからジンに恥だけはかかせないでね」
「はーい……」

ジンさんは、MEN’s Willのトップモデルで、大学でも俺の先輩に当たる。本来、前回の時計の企画の際も、ゴールドの時計のモデルに抜擢されていたが、卒業論文の提出に追われて断ってしまったらしい。

ジンさんが断った手前、こちらの分が悪く、俺の参加がほぼ拒否権なしで決まってしまった、と後から聞いた。

ちなみにゴールドは柊君の所属する雑誌のナンバー2が担当することになったらしい。

企画書を見ればその人の名前も載っていて、かなり大がかりな企画のようだ。

というより、トップモデルの中に自分がいるのが違和感でしょうがない。





[ 31/140 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



TOP


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -