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「……やっと昔の顔になったな」
「え、なっ、ん」
だから、柊君がそう呟いて俺に唇を重ねて来た時、とっさに何が起こったかわからなかった。
突然重ねられた唇は、以前の口づけを思い出させ、俺は柊君の胸を押すことで抵抗を示す。
しかし、そんな些細な抵抗など柊君はモノともせず、グッと腰を引き寄せられて密着させられる。
「んっ、んー、ふっ」
何度も角度を変えられ、グッと深く口づけられる。
腰に回った手が怪しく背中を這いまわり、背筋に沿って撫であげられればゾクゾクとした感覚がせり上がってくる。
「や、ダメ…っ、ふ、んーっ」
拒否の言葉を吐こうとした口腔内に柊君の舌が侵入してきて、いよいよ俺はうろたえた。
恥ずかしいかもしれないが、俺にはこういう経験は一切なかったのだ。
この前の柊君とのキスも翻弄されるばかりで、抵抗なんてほとんどできなかった。
口の中を柊君の舌が翻弄し、連動するように背中を撫でられる。口蓋の裏筋を撫でられ、舌を時々吸い上げられると、もう限界だった。
「ん……、はっ」
くたり、と力が入らなくなってきて、膝が崩れる。柊君が俺の腰を支えていたから倒れることはなかったが、へなへなと力なく床に崩れ落ちた。
それを追うようにして柊君もしゃがみこんでくるため、ますます逃げ場がなくなってきている。
壁際に追い込まれて、俺ははしたなく喘ぐことしかできなかった。
そうやってようやく解放されたことには息も絶え絶えで、きっと唇は真っ赤になっていたことだろう。
「……エロいね」
そう呟かれ、唇をぬぐわれる。柊君の手は冷たくて、頬がどれだけ熱くなっているのかを感じた。
「結局呼び出しはうやむやだったからな。今日にでも埋め合わせしろよ」
「……そのために、来たんですか」
「かもな」
ニヤニヤと笑う柊君に、俺は壁に寄り掛かって息を整えることしかできなかった。そんな俺の頬を柊君の手が行き来し、観察するように眺められる。
「で、どうするよ」
「―――ナオ君が、待ってますので」
「あっそ」
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