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「―――あの、柊君」
「あ?」
「何しに来たんですか……」

―――こんにちは、セリです。

俺が倒れてしまった日からひと月が立ちました。最初はどこかぎすぎすした雰囲気があった撮影現場も普段の活気を取り戻し始めた今日のこと。

いつものように撮影を終えて撮影所を出ると、なぜか柊君がいた。

ライバル会社の雑誌の撮影が被ることはほとんどない。柊君が誰に会いに来たのかは分からないが、帰らせてほしい。

「いちゃ悪いのかよ」

―――のに、とうの柊君はふてぶてしくこういうのである。

俺は思わずため息をつきかけたが、なんとかそれを抑え込んで口を開いた。

「スタッフさんに用事なら、まだみんないると思うから声掛けてくるけど?」
「別にいい」
「そうですか……じゃあ、お先失礼します」

取り次ぎをしようとしてもバッサリ切られてしまったので、俺は諦めて先に帰ることにした。

すると、柊君も後ろからついてきている気配がして、俺はゆっくり振り返る。

「……柊君も帰るの?」
「悪いか」
「悪くないけど……」

それ、俺を待ってたってことでいいんですか。

清々しいほどふてぶてしい柊君に、俺は思わずそう言いそうになる。

俺のことが嫌いだと言いながら、不思議な人だ。素直に言わないところも、普段の柊君とは違ってなんだか面白い。

柊君なりに、俺のことを気にしてくれているのだろうか。

そう聞いたら絶対訂正されるだろうが、なんだかくすぐったくって悪い気分ではなかった。

俺は柊君が嫌い、というわけではないのだから。

「―――柊君、ナオ君が近くのファミレスで待ってるんだけど、一緒に来てくれる?」
「しょうがないな」

だから、思い切って俺から誘ってみた。

今日はナオ君がファミレスの新作メニューが食べたいと言っていたので一緒による予定だったのだ。

先に仕事が終わったナオ君には先に店で待ってもらっているので、会いに行かなくてはならない。

そう思って声をかけると、案の定の答えが返ってきて、俺は小さく笑ってしまった。

そのまま柊君とつれだってファミレスに向かう。途中で会話らしい会話は一切なかったけど、それでもあまり苦痛ではなかった。

そのままファミレスにつくと、ナオ君が待っている席に向かう。ナオ君は俺たちを見ると、驚いたように目を丸くした。





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