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笑えるような元気は残っていなかったが、逆に今回は功を奏したらしい。

無表情で、目線だけをカメラに向けることにより、クールな雰囲気を醸し出していた。カメラに集中することでなんとか心も落ち着いてきたし、最後の方は小さくほほ笑むこともできた。

「はーい、オッケーです!」
「ありがとうございました!」

順調に撮影を終え、撮影台から降りると俺は深く息を吐いた。いろんな意味で一番疲れた撮影だったように感じる。

「お疲れ様です!さっきの撮影で余ったケーキがあるので、良かったら食べてください!」

スタッフの1人がそういっているのを聞いて、俺はさらに頭を抱えたくなった。

―――なんで、今日に限って甘いものばかり……っ

案の定、柊君は露骨に嫌そうな顔に戻った。普段は温厚な柊君のそんな様子に気づいた人は不思議そうにしていたが、理由がケーキだとは思わないのだろう。

「……すいません、俺はケーキいらないです。先にポラ確認してていいですか?」
「あ、そう?じゃ後で行くから良さげなのピックアップしといて」
「はい」

近くにいたカメラさんに声をかけると、俺はポラを確認するために適当な机に座る。すっかりメイクも落として息を吐いたころ、柊君がやってきた。

「……半分よこせ。俺も確認する」
「あ、うん」

言われるままに渡すと、二人で黙々とポラの映りを確認していく。さすがトップモデルというだけあって柊君のたたずまいはとても綺麗で、正直どれも会心の出来だと思った。

どう考えても足を引っ張っているのは俺の方で、見劣りしないようにするので精一杯な印象である。

「―――オマエ、本当に残念な映りだよな」
「うん…分かってる」
「オマエがマシなのを探せばいいわけだから楽だけどさ」
「はい……」

柊君にずけずけと言われ、俺は小さくうなだれる。

気持ちが浮上しないままポラ確認をし、遅れてやってきたカメラさんたちと写真を確認して、今日の仕事は終わりになった。

この後のことを考えると出来れば終わってしまってほしくない、なんて思ってしまったが、柊君が勝ち誇ったように俺を見ているのが何とも言えなかった。

「セリちゃん元気ないよー?これで元気出して?」
「え?―――むぐ」

そんな声が背後からして、振り返ると口の中に何かが放り込まれた。半ば無理やり差し出されたものを、俺はなんとかのみ込む。

「おいおい余りモノ食わせるなよー」
「だって、捨てちゃうのもったいないじゃない。セリちゃんもガトーショコラなら大丈夫だよね?」

一部始終を見ていた他のスタッフの人たちから、からかい交じりのヤジが入る。

―――ガトーショコラ……っ





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