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結局撮影が始まったのはそれから一時間後だった。

今日は昨日とは違い、二人で撮影するのでスタッフも気合の入り方が違うようだ。程よくぴりぴりした空気があたりを支配しており、俺も気合が入ってきた。

「―――さっきの、カメラか?」

そんなとき後ろから声をかけられて、俺は言葉に詰まる。

柊君はさっきとは打って変わって冷たい声音で、やはりさっきのはナオ君が居たせいか、と納得した。

「ナオ君はカメラさんで、友達です」
「はっ、オマエにお似合いな冴えないやつじゃねえか。同情でもしてるのか?」
「同情?」
「昔の自分をみているようじゃねえの?誰にも助けてもらえないなら俺が、とか考えてたら張り倒すぞ」
「ナオ君は『僕』とはちがう!」

さすがに声を荒げたりはしなかったけど、俺は後ろを振り返ると思いっきり柊君を睨みつけた。

「……俺のことが嫌いでも、良く知りもしないくせにナオ君を悪く言うな」
「はっ、そういう理論が通用しないからオマエは高校で1人だったんだろう?」

柊君の言葉に、俺はグッと唇をかむ。

『僕』と仲良くすることは、クラス中から嫌われることを意味した。どんなに人気者だったからってそれは関係ない。

友人が僕だと、評価が下がる―――理屈じゃないのだ。

震える拳を握り込むようにしてうつむいていると、柊君が近づいてくる気配がする。

「噛むなよ。メイクが落ちるだろ?」
「んっ」

相変わらず冷たい声でそう囁かれ、唇を撫でられる。ぞわり、とした感覚に背筋が震えて、俺は思わず柊君から距離を取った。

「はーい、じゃあ撮影始めまーす」

スタッフさんのその一言で、俺は急いで撮影台へ向かった。

柊君も後ろからついてくる気配がして、何とも言えない空気のまま撮影が始まる。





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