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Side 柊


―――相変わらず、ムカつく野郎だ。

まっすぐ自分を見つめてくる視線は変わらない。普段は自信なくておどおどしているくせに、そういうところが気に入らないのだ。

あのときだって――

『――――いらない』

ゆっくり首を振りながら、俺が差し出したチョコレートケーキをそういってはねのけたブスカ。

思いだしたらあの時の怒りがこみあげてきて、俺は目の前にいる『セリ』を壁に押し付ける。

痛みに顔をゆがめながらも俺を見上げるその視線に、ゾクリとした。



『―――なぁ、あいつと仲いいの?』

そう聞いた俺に、ブスカは小さく頷いた。その目に宿る感情が恋情だなんて、すぐに察しが付く。

誰にも優しくされない、哀れなブスカ。少しでも優しくしてもらえば引っ付いていって、刷り込まれたヒナのように馬鹿みたいに信頼する。

そういうのを利用されているのだと、気づかないのが滑稽で。

―――アイツにケーキを持って会いに行くブスカのバカみたいな幸せそうな顔が、不細工なのになぜか眩しくて。

『アイツ』に向ける、ほんの少しの気持ちでもよかったんだ。

あの笑顔が、欲しかっただけなんだ。


それなのに―――

『なぁ、ケーキ好きなんだろ?これ食べないか?』
『――いらない』

かたくなに首を振るブスカに、目の前が真っ赤になった。

なんで俺はダメなのだと、言いようのない怒りが湧いた。

本当は、違うのに。


―――自分が、心の底でブスカを見下していたのを見透かされたような気がしたから、怒りが湧いたのだ。





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