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「――――――っ、」
その言葉に、怒りで目の前が真っ赤になるようだった。
カッとなってしまったが、手が出なかった自分をほめたいくらいである。
俺は柊君を睨みつけると、震える声で呟く。
「―――うるさいっ、柊くんに、何が分かるって言うんだ…っ」
簡単?遊んで?楽しい?
―――ふざけるんじゃない。
『僕』だって、最初から整形したかったわけじゃないんだ。
大好きだった甘いものを我慢して。
卒業式の後からまず痩せようとダイエットを始めて、少しずつ食べる量を減らして運動を始めて。
でも、思ったように痩せれなかった。実際体重は落ちていたのだけれど、『僕』の不細工は痩せたくらいでは少しも改善されなくて。
もう少し、もう少し痩せれば理想に近づく。
そういった思いと、リバウンドへの恐怖からご飯を食べることができなくなり、ついには一日一食食べればいい方、という状態になった。
そうして、心配した親が食べさせようと買ってきたお菓子を食べても、すぐに戻してしまい。
―――そうして、拒食症になってしまっていた『僕』に、親が泣きながら整形を勧めて来たのだ。
「――『僕』は整形した事、後悔してない。柊君には俺の気持ち分かってもらえなくてもいいし、分かってもらいたいとも思わないから。…これ以上俺を怒らせたくなかったら、その話はしない方がいい」
整形手術をする前に母親が言った一言が忘れられない。
『綺麗に産んであげられなくてごめんね―――』
それを聞いて、『僕』は手術台で涙した。
悪かったのは、お母さんではない。
綺麗に産めなかったから、と自分を責めないでほしい。
悪かったのは―――『僕』が自分を認めきれなかったせいなんだ。
自分を認めて生きていく勇気がなかったから、コンプレックスばかりで、自分のいいところを見つけてあげられなかったから。
手術が終わり、俺は新しい自分に生まれ変わって決意した。
―――絶対、後悔しないように生きよう。
『僕』の人生を奪ってしまったのだ。だから、『僕』を産んでくれた親への敬意をこめて、俺はこれから生きていく。
後悔しないように、前を向いて生きていく。
それが俺の、譲れない想いだ―――
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