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今日はもう撮影が終わってしまったようで、反射板などの機材も貸してもらえることになったのは嬉しい誤算だった。
「……楽に、してくさーい」
スタッフのみんなが見守る中、二人での撮影会が始まる。
俺はナオ君の言葉に合わせて、どんなポーズでもとった。横顔がいいと言われれば従ったし、時には目を閉じて耳をすませるようなポーズもした。
時にはいたずらっぽく笑ったり、わざとはだけてみたりした。
―――ナオ君と出会えて、よかった。
初めて出来た、友達と呼べる存在。いろんなところに行って、いっぱい楽しい思い出を作って。
もらった優しさの分だけ、感謝を込めて。俺はナオ君の被写体になる。
そうして、ナオ君の指令だけが響く、静かな撮影会は、一時間ほど続いた。
カメラをおろしたナオ君の目からは大粒の涙が溢れていて、スタッフの誰もが息をのむ。
ナオ君はカメラを置くと、溢れる涙をぬぐいもしないまま、深々と頭を下げた。
「――――終わりです、お疲れさまでした……っ」
「ありがとうございました……っ」
「うっ…セリさん……っ」
俺も挨拶を返すと、そのままギュッと抱きつかれて、俺もまた涙が溢れて来た。
「やっぱり、セリさんが一番綺麗です…っ」
「嬉しい、ナオ君、本当にありがとうね……っ」
ギュッと抱き合う俺たちに、スタッフの1人がぱちぱちと拍手をした。
すると、それは波状に広がって、スタッフのみんなが拍手で祝福してくれる。
「セリさん、お疲れさま!」
「すごくよかったよ!!」
「今まで、ありがとうね…っ!」
そんな調子で言葉を掛けられながら、スタッフのみんなに抱きしめられて、俺はとても幸せだと思った。
「最後に、いいかな」
みんなとハグを交わしていると、噂を聞きつけたらしく浜口さんがやってきた。
「浜口さん……今までありがとうございました」
「いいんだ。君の姿をもうみれなくなるのは寂しいけれど、とてもいい経験をさせてもらえたから」
「それは俺も同じです」
俺たちはそういうと、心から笑いあった。そうして、浜口さんがつかれたようにいたずらっぽく笑う。
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