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「……大好きだったよ、慶太。『僕』は、慶太が居たから救われた」
「飛鳥先輩のピンチなら、いつでも駆けつけます。柊先輩に意地悪された時は、真っ先に言ってくださいね」
「ふふ、ありがとう」
慶太の言葉に、また嬉しくて泣いてしまいそうだった。今日の俺は、本当に泣いてばかりだ。
結果として、慶太を傷つけることになってしまった俺にも、まだ優しい言葉をかけてくれるのだ。
慶太の優しさは大きくて、暖かくて、昔から俺を包んでくれていて。
―――ずっと、甘えていたのは俺の方だ。
「……慶太、大好きだったよ」
「俺も、飛鳥先輩が好きでした。今だって、これからだって、大事なことには変わりませんから」
「うん、俺も一緒。―――慶太はこれからも、大事な人だよ」
俺の言葉に、嘘はない。
俺は、慶太がいなければダメだった。
『僕』がいじめに耐えられたのも、慶太が居たからだった。もし、慶太が居なかったら整形することもなかった。
―――そうしたら、ナオ君とも会えなかったし、柊君とも仲直りすることができなかった。
「…ありがとう」
そう思うと、するすると感謝の言葉が溢れてくる。思わず頭を下げた俺に、慶太の方が慌てていた。
それがおかしくて、俺たちはまた笑いあう。
「……じゃあ、またね」
「―――はい」
俺たちはそういうと、笑って別れた。来た道を歩き始める俺と、玄関の扉を閉める慶太。
ちょっとだけ振り返って、俺はまた笑って歩き始める。
俺の運命を変えた、大事な人。
大好きで、大好きだった人。
俺の―――初恋の人。
バイバイではない、再会を願う別れの言葉。
もし次に会うときは。
―――どうか、今よりずっと、素敵な関係が築けますように。
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