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Side  飛鳥



―――抱きしめられて、ささやかれた言葉に、夢じゃないかと思った。

俺の肩に顔をうずめた柊君は、痛いくらいに抱きしめながら『好きだ』と言ってくれたのだ。

「――――」

そうして、肩口が濡れていることに気づいて、俺は目を丸くした。

柊君が、泣いている。

「柊君………っ」

たまらなくなって、俺は柊君をギュッと抱きしめた。弱さを見せてくれる柊君に、愛しさが増していく。

いつも強くて、どんな辛いことも笑って流すような柊君。そんな柊君が、俺に好きだと言ってくれた。

『行かないで』と、俺を望んでくれた。

―――それが、どんなことよりも嬉しい。

柊君を抱きしめながら、俺の目からも涙が溢れた。今度は言葉を尽くそう、と深く深呼吸をしながら、俺は柊君に囁いた。

「嬉しいよ、俺を望んでくれて…でも、行かなくちゃ」
「―――やっぱり、ムシがいいよな。散々いじめといて」
「違うよ。俺―――柊君が好きなんだ」

俺はそういうと、柊君の唇に小さくキスをした。それから甘えるように首に腕を巻きつけると、重ねて何度もキスをする。

柊君は、無反応だった。驚いたのか固まってしまったまま、俺にされるがままになっている。

柊君の唇から口を離すと、俺は至近距離で微笑んだ。

「…慶太のところには、俺が行かなくちゃ。でも俺の想い、信じて。絶対、柊君のところに帰ってくるよ。―――俺の柊君が好きな気持ち、信じて。俺は、柊君と一緒じゃないと嫌なんだ」





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