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「えっ!それってすごいことじゃないですか!」
――それからすぐ。俺は会社の人と別れるとナオくんに相談した。
ナオくんも驚くばかりで、夕飯に入ったファミレスで二人してため息をついてしまう。
「まさか…断ったりとか」
「それはさすがに無理だよ。降板は死活問題だし、向こうはトップモデルさんだし、断る理由ないし」
「ですよねー」
「……でも、自信ない」
俺はふーっと息を吐くと、ファミレスの机に突っ伏した。
俺はまだ、モデルを始めて半年で。
向こうはトップモデルさんを用意してきたような企画だ。
俺がこなせるかと聞かれれば、自信がないのが本音である。
「……でも、チャンスですよっ」
そんな俺を見かねたのだろう。ナオくんは励ますように続けた。
「他の会社の方と仕事ができるなんて、またとないチャンスですっ。きっと、この仕事じゃないと出会えない人もいるだろうし、マイナスばかりじゃないですよ」
むしろプラスばっかりです、と力説するナオくんに、俺は思わず笑ってしまった。
「――たしかに、ナオくんのいう通りだね。やってみなきゃわかんないし」
「そうですよ。もし心配でしたら、俺がスタジオまで差し入れ持っていきますし」
「母さんか」
クスクスと笑いながら、俺は来週に迫る仕事に思いを馳せた。
何故俺を指名してきたのか、わからないことも多いが自分のやることをするだけである。
しかし、この仕事の本当の意味を知るのは――もう少し後になる。
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