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―――自分ではびっくりするくらい穏やかに認められたが、現実はそううまくいかないようだった。

「―――何でいきなりこんなことになってんだよっ!」

会議室から出ると、すぐにそんな声が聞こえて、慌てて俺はその場へ向かった。

「慶太!やめろ!」

そこにいたのは、浜口さんの胸倉を掴んでいる慶太で、俺は二人の間に入るようにして二人を引き剥がした。

しかし、元々俺よりも体格のいい慶太である。俺の拘束などモノともしないように暴れながら浜口さんに向かって叫んだ。

「あんた、飛鳥先輩気にいってたんだろ!?なんでこんなに簡単にクビ切れるんだよ!」
「悪いけれど、セリさんのことについてはモデル会社も納得している。慶太くんが出る場面ではないよ」
「にしたって…っ!あんたらの身勝手で、これから先輩がどんだけ苦労するか分かってんのか!素人にだって降板は死活問題だってことぐらい分かる!」
「やめろってば!」

俺は慶太にしがみつくようにして叫ぶが、慶太はだいぶ興奮しているようだった。俺が必死で止めて、やっと暴れるのはやめてくれたがまだ怒りは収まらないようである。

「柊君!手伝って!」

そんなとき、ふと向こうから柊君がやってくるのが見えて、俺は藁にもすがる思いで柊君に向かって叫んだ。

今は落ち着いてくれているが、これ以上は俺一人では支えきれない。

浜口さんに視線で立ち去るように促すと、縋るように柊君をみた。

「じゃあ、これで失礼するね」
「待てよ!話はまだあるんだ!」
「いい加減落ち着け!慶太!」

立ち去ろうとする浜口さんにさらに掴みかかろうとする慶太に、柊君が怒鳴った。殺気の満ちたそれに慶太も気がそがれたようで、柊君をぎっと睨みつける。

「……アンタ、悔しくないわけ?誰よりも綺麗で、頑張ってる飛鳥先輩がクビだ。しかも、名目上は先輩から降板を示唆した事になってるんだ」
「本人がオマエの暴走を止めに入ってるんだ。そういうことだろ?」
「俺は…俺は悔しい!なんで飛鳥先輩ばっかり、こんなことになるんだ…っ!」
「慶太………」

本気で悔しがっている様子の慶太に、俺はそっと拘束を解く。慶太は悲しそうな目で俺を見つめると、そっと俺の頬を撫でてきた。

「…慶太が俺のこと思ってくれるの、嬉しいよ。でも、俺は大丈夫だから」
「先輩……っ、なんでそんなに、耐えられるんだ」
「みんなが居るかな、かな?」





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