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どんなに慶太との関係が変わったって、柊君との関係は揺らがないのに。
柊君が気にする必要なんてない。それでも不安を感じてしまう柊君に、俺はなんと声をかけたらよかったんだろう。
……やっぱり俺は、言葉が足りないんだな…
そう思うと、はぁとため息が漏れた。
それはそのまま白い息になって広がり、そして空気に溶けてしまう。
半歩先を歩く柊君の背中が、半歩以上離れている気がする。せっかく一緒に帰っているのに、心は離れて行ってしまうようだ。
それがこんなに、寂しいなんて。
―――あぁ、そうか。
俺は、柊君が好きなのか。
好きだから、ドキドキするし傍にいられないことを悲しいと思う。
辛い時に傍にいてくれて、話を聞いてくれた。チョコレートアレルギーの俺に、まっすぐにシュークリームを差し出してくれた。
―――たくさん、嬉しい気持ちをくれた。
どうして気付けなかったのかと、思いが溢れて来て泣きそうになった。それでも、急に泣いたら変だから、俺はグッと涙をこらえる。
この涙のように、溢れさせてはいけない気持ち。
柊君は、絶対迷惑に思ってしまう。あれだけ俺をいじめていたのだから、きっと俺がずっと嫌いだったのだ。友達の関係になれただけで満足しなければ、本当に厚かましい奴になってしまう。
―――でも、今は静かに思わせてください…
撮影も頑張るから。だからしばらく、このままでいさせてください。
そう思いながら眺めた夜空は、透き通るように星が光っていて、俺はそっと目を細めたのだった……
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