1




「セリちゃんこっち向いてー…そうそう、次視線だけこっちー、はい、いいよー」


――俺がモデルを始めて半年が経った。

モデルの仕事は好調で、販売された雑誌の売れ行きも上々らしい。

他のモデルさんに比べて女性ファンが多いらしく、送られてくるメッセージの数に驚かされたものだ。

MEN'S WILLは男性雑誌の中で1、2を争う人気雑誌で、正直ここまで順調なモデルは珍しいらしい。

だけど、驚き混じりの応援が、俺にとって励みになるわけで。

「――はいっ、お疲れ様っ」
「お疲れ様でしたー」

今日もつつがなく仕事を終え、着替えつつ一息ついていると、契約した会社の人が俺のところにやってきた。

「セリ、ちょっといいか」
「大丈夫ですけど…言ってくださればすぐに会社に向かいましたのに」
「すまない、急ぎでな」

普段らしからぬ様子に首を傾げつつも、椅子を勧めて話を聞くことにした。

何事か、と思っていると、相手が口を開く。

「――セリを指名で、緊急コラボ企画が来た」
「っ」

俺が驚く間もなく、会社の人は興奮したように続ける。

「すごいことだぞっ。相手は『aria』のトップモデルだ。今度出す時計の撮影に、相手指名されたらしい」

ariaとは、同じメンズジャンルの雑誌で、いわゆるライバルだ。

しかし、最近ではあまり対抗するようなこともなく、年に一回はコラボ商品を出したりしている。

その相手から指名された――そのことに俺はただただ驚くばかりだ。





[ 9/140 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



TOP


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -