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そう言われて、ドキッとした。
そんな風に、考えたことがなかった。確かに柊君はずっと憧れで、尊敬できるし、とても好きだとは思うけれど。
恋愛感情で、好きなのかな……?
でも、少しエッチなこともして。たくさん抱きしめてもらえて。
――――どきどきしたし、嬉しかったんだ、俺……
「―――あれ、セリさん!?」
「ごめん、何か恥ずかしくて……っ」
あの時のことを思い出してしまい、顔に一気に熱が集まる。思わず顔を押さえてその場にしゃがみ込むと、ナオ君が慌てたように声をあげた。
俺の気持ちは、今どこにあるんだろう。
ナオ君が大事。慶太とまた話せるようになって嬉しい。柊君に抱きしめられてどきどきした。
ナオ君との友情を優先したいと思いながら、俺の感情は宙ぶらりんだ。今日の撮影で指定がすごかったのも、俺のそんな浮ついた感情が起こしたのかもしれない。
「―――よしっ!」
「うわぁっ!」
「なんか気合入った!ありがとうねナオ君!!」
「は、はぁ……」
俺は自分の頬を叩いて気合を入れると、一気に立ち上がった。ナオ君は俺のそんな様子に目を白黒させていたけど、それでも『元気が出てよかったです』と苦笑してくれた。
「とにかく、目の前の仕事が先だよね…っ」
この企画、成功させたい。
こんな素敵な企画に参加させてもらえるチャンスなんて、二度とないのだ。
浜口さんに控え目だとからかわれたけど、もう少しいろんなことに挑戦してみるような姿勢で臨んでみよう。
そうすれば、また新しい自分を見つけて、俺は変われるのだろうか。
姿を変えるだけが変化ではない。気付きかれにくくとも、自分の中に確かな変化を感じたい。
結局、俺はずっと、自信が欲しいだけなんだ。
望んで、望んで。
そうして、自分に自信がついたら見えるものがあるのかな。
俺は―――だれが好きなんだろうか。
――――俺は、誰と一緒にいたいの?
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