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「じゃあ、そろそろスタジオに戻るね」
「あ、じゃあ俺もいきます」
そんな風に休憩時間を過ごしていると、休憩が終わりに近づいてきたので俺は立ち上がった。
するとナオ君も立ち上がり、一緒にスタジオに戻ることになる。
「慶太は?もう帰るの?」
「はい、ちょっと浜口さんと話してから今日は帰ります」
「そう。お疲れ様」
「はい。飛鳥先輩もお疲れ様です」
にっこりと屈託なく笑われ、慶太の笑顔に見送られながら俺たちはスタジオに戻ろうとした。
「あ、柊君」
すると、扉を開けたすぐ先に柊君が居て、俺はそっとドアの背に隠れて道を譲る。
「柊君、今から休憩?」
「あぁ、予想以上にアヤトさんと話しこんでたから、行って来いって」
「そう。お疲れ様」
「おう」
ぶっきらぼうに言われ、柊君が休憩に入ったのを確認すると、俺はナオ君とつれだってスタジオへと向かった。
「セリさんって、ヒイラギさんと付き合ってるんですか?」
「えっ」
その道の途中、ナオ君に何気なくそう聞かれ、俺は笑いながら首を振った。
「違うよ。ないない。だって、柊君が俺を相手にする訳ないもん」
「どうしてそう思うんですか?」
「どうしてって……」
当然じゃないか、と思ってしまい、俺は苦笑した。
柊君にはずっと嫌われていて、最近やっと仲直りをして、友人程度には話してもらえるようになったのだ。それなのに、さらにその上恋人同士になるなんて、あり得ないと思う。
許してもらえただけでも奇跡のようなのに。
「柊君は俺のこと嫌いだったし、今だって、かろうじて友人くらいだし。柊君が俺を好きになるわけないんだから、付き合う訳ないじゃん」
「でも、セリさんは好きなんですよね?」
「え………」
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