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慶太はそういうと、俺をグッと抱き寄せて、頭を撫でてきた。

突然のことに目を丸くしながら慶太を突っぱねるように手を伸ばす。

「ちょ、子供扱いするなよ!」
「違いますよ。がんばり屋さんにご褒美です」
「でも…誰か来たら怪しまれるし」
「じゃ、これならいいですか?」

慶太はそういうと、戸惑ってばかりの俺の手をギュッと握った。

「これなら、外からは俺たちの身体で見えませんし」
「………もう、ばか」

強引さが、逆に懐かしい。

手が触れているだけで、他人の体温を感じるだけで、張りつめていた緊張が和らいでいくのが分かる。

思わず目を閉じていると少し眠気を感じる。慶太がそれを察したかのように『肩をどうぞ』と言ってきたので、少しだけ甘えることにした。

カシャッ

「―――ん?」
「あ、スイマセン起こしてしまって…っ!こっそり撮るつもりだったんですけど」

軽い音に目をうっすら開ければ、一眼レフを構えたナオ君が焦ったように頭を下げてきた。

ナオ君は慌てたようにカメラをおろし、事情を説明する。

「浜口さんから依頼を受けたんですが、化粧品の告知サイトでブログを書く計画らしく、モデルさんやスタッフさんたちのオフショットをとって欲しいと言われまして…」
「それでナオ君が撮ってるの?」
「はい。師匠は撮影で忙しいですし、俺にとってもいい経験になりますし」

にっこり笑うナオ君に、『じゃあ、好きなだけどうぞ』と笑うと、ふざけてピースをしてみた。慶太もノリノリのようで、同じようにポーズを決めている。

「そういえばナオ君、髪の毛もう一段明るくしたんだね」
「はい。スプレーじゃなくて、今回は本格的に染めてみました」
「いい色だね。二色染め…かな?」
「はい。なんかこっちの方が立体感とかが出るらしいです」

ナオ君にカメラを向けられながら、ナオ君をじっと見る。ナオ君の髪型はまた綺麗にセットされていて、また新たな魅力を引き出すかのようにとても似合っていた。

以前は地味だったけど、こうしてみるとナオ君は人並みには綺麗な顔立ちをしていると思う。

出会ったころは自信がなくておどおどしていたけど、最近はしっかりした印象が強くなって、スタッフさんの中でも好評なのだ。

「…ナオ君、いい男になったよねー」
「ちょっと、いきなり何なんですか。妙に恥ずかしいんですけど」
「ねぇ、慶太?」
「ですよね」

俺たちが示し合わせたように笑っていると、ナオ君がカメラ越しに真っ赤になっていて可愛かった。そういう初心なところも、逆に魅力だというのに。





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