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誇らしげに浜口さんが笑い、ジンさんも同意していた。
「あと、今日のセリさんの撮影は覚悟していてくださいね?」
「うぇっ」
「…映像で出ないかわりに、こちらで目一杯働いてもらいますので」
浜口さんの容赦ない言葉に、俺は思わず変な声を出してしまった。ジンさんがおかしそうに噴き出していたが、浜口さんはにこにこと笑ってとりつく島もないようである。
そうして行われた撮影は、本当に過酷なものだった。
いつも以上に長時間立ちっぱなしで、表情などもたくさんリクエストが入る。指の先まで神経を通わせるような緊張感の中撮影は続き、休憩の声がした途端どっと疲れてしまった。
「休憩いってきます。お疲れ様です」
「はーい」
傍にいたスタッフさんに声をかけ、撮影現場の外にある談話室に入ると、俺はソファーに座って大きなため息をついた。
久々の大仕事に、どっと疲れが出てくる。
「飛鳥先輩、」
疲れから逃れるように目を閉じていると、声をかけられて目を開けた。そこにいたのは言わずもがな慶太であり、嬉しそうに微笑まれるとなんだか恥ずかしい。
「お疲れ様です。良かったらこれのんでください」
「ありがとう…」
差し出されたのはスポーツ飲料のペットボトルで、良く冷えた感触が心地いい。思わず顔にあてたりしていると、慶太は俺の隣に座った。
「慶太もう撮影終わったんじゃないの?」
「はい、終わりました。そろそろ飛鳥先輩も休憩に入るんじゃないかと思って待ってたんです」
「そう…ありがとうね」
「当然です」
自慢げに笑う慶太に、俺は思わず微笑んだ。
昔のわだかまりが解けてから、慶太と話をするのは今日が初めてだ。思った以上に自然に接することができて、ちょっとだけ安心した。
「撮影見てたんですけど…今回のはきつそうですね」
「そう見えた?」
「はい。俺あんなに指定されたりしたことありませんから」
「わっ」
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