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「―――で、報告は?」
「やっぱり知りたいんですか…」

それから数日。大学の学食で呼び出された俺はジンさんと食事をとっていた。

ジンさんにこの前の映画のお礼を言うと、『お礼は報告で』と言われ、楽しそうに見つめられているという状態に至る。

興味津津のジンさんには悪いが、どういうふうに報告していいかわからないのが本音だ。

とりあえず困惑しながらも、当たり障りのない会話をする。

「映画見て、カフェに入ってご飯食べて…おかげで楽しく過ごさせていただきました」
「あいつらはなんか進展あったのか?」
「さぁ……でも、仲はよさそうでしたよ」

曖昧に微笑むと、ジンさんは『ふーん』と言いながら日替わり定食を食べていた。今日はカツカレーのようで、見ているだけで結構お腹にくるものがある。

「ま、今はそれでいいや。今日はこれから講義ないんだろ?」
「はい」
「じゃ、一緒にスタジオ行こうぜ。洗いざらい吐かせてやる」
「もう、そんなに特別なことはなかったんですってば」

ニヤニヤと笑っているジンさんに、俺は困ったように苦笑して見せる。実際、映画を見たりとかは普通だったのだし、特に話すべきことはなかったように思う。

―――でも、俺、慶太とキス…したんだよな……

あの朝は、特別な朝だった。

もう慶太への気持ちは切り替えられたとはいえ、『僕』はあの日、本当に救われたのだと思う。

何度も柊君の言葉や、ナオ君の優しさに癒されてきたけれど。

やっぱり、慶太と過ごした日々が嘘なんかじゃなかったことが、とてもうれしかったから。

「…やっぱなんかあったんだろう」
「え?」
「意味なく照れてんじゃねえよ。なんか疎外感感じるだろうがー」
「もう、大してそんなこと思ってないくせに」
「ばれたか」

いたずらっぽく笑うジンさんに、俺は呆れたようにため息をついた。それを見て、ジンさんが俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

「なんかオマエ、俺といるときはいつも困ってるか呆れてるよな」
「ジンさんのせいですよ…」
「かもな。ま、オマエのいろんな表情見れるの、先輩の特権だし?」

この人はこういうところが、たらしなのだ。

人から好かれる理由がよくわかる。何気ない一言が人の肩の力を抜いてしまうのだ。





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