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Side 飛鳥


ナオ君の言った通り、マンションから少し歩いたところに公園があって、俺たちはそこのベンチに腰を下ろした。

空はうっすら紫がかっていて、もうすぐ夜が明けることを訴えている。

俺は慶太の顔を見れなくて、思わず顔を俯けた。

すると、未だつないだままだった手が視界に入って、なんだか切ない気持ちになった。

―――俺達は、手をつないだことさえなかったな……

今更になって、その事実に気付いた。

たくさん抱きしめてもらって。たくさん元気をもらっていたけど。

本当に、俺は慶太に何か返せていたのだろうか?

ただただ好きだと思うばかりで。

こんなふうに、体温を分かち合えるような関係ではなかったように思う。

―――それじゃ、嫌われてても当然かな…

「――――そういえば、先輩と手をつなぐの初めてだね」
「……そ、そう、だね」

そんな風に考えていると、俺の気持ちを受け取ったかのように慶太が呟く。

そうして、俺の存在を確認するように、再び手をギュッと握られた。

「未だに夢みたいなんだ、先輩にあえて…」
「無理しなくていいってば」
「無理してないって」

慶太はそういうと、俺をギュッと抱き寄せてきた。突然のことで倒れ込むように慶太の方にもたれてしまい、俺は恥ずかしくて顔を赤くする。

「―――俺はずっと、先輩が好きだったよ。今だって、また先輩に会えたことが夢みたいで、ドキドキしてる」
「え――――」

言われた言葉とともに、慶太の胸に顔をうずめられる。

耳を澄まさなくても聞こえてくる、激しい心音。自分のものではない、他人の体温。

俺をずっと、支えてくれていた――

「俺は、あの頃からずっと、先輩に笑っていて欲しかった。だから、いろんな人に先輩の魅力を知ってほしくて、クラスのヤツとかに声をかけたんだ。―――結果として、先輩を傷つけてしまったけど」
「―――でも、慶太だって」
「あのときは、嫉妬で酷いことを言ってしまいました。自分が正しいと思ってしてきたことが、先輩を傷つけて。自己嫌悪で死にそうでした」





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