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「…じゃ、帰るね」
「はい。また今度映画見ましょうね」
「うん。――――っ」
「………どうしました?セリさん」

セリさんが家を出ようとしたまま固まってしまったので、俺は首を傾げながら外を覗いた。

「…………慶太」

すると、エレベーターから降りてきたばかりの慶太がこっちに向かって来ていて、俺は思わず呟く。

慶太も俺達に気がついたのだろう。

まっすぐ俺達に駆け寄ると、迷子の犬みたいな頼りなさげな顔で俺達を見た。

「……ナオに話があって来た」
「……そ。じゃ、俺は帰るよ」
「飛鳥先輩にその後会いに行くつもりだったんだ。―――お願いだ、話を聞いてくれっ」

するりとドアのすき間から出ていこうとするセリさんを、慶太が腕を掴んで引き止める。

もう身を焦がすような嫉妬は感じないけれど、見ていて少し切なくなった。

終わりを迎える、俺の恋。

寂しさから逃れるために縋った恋だけど、胸の痛みが消えるにはもう少しかかりそうだ。

「……俺は待ってるから、セリさんと話して来なよ。俺がいたら話しにくいなら、その先に公園あるし」
「ナオくん………」

苦笑する俺にセリさんは困惑していたが、慶太の行動は早かった。

「サンキュ、ナオ。寝ててもいいから」
「ちょ、慶太っ!」

セリさんの腕を掴んだままさっさと部屋を出ていってしまった慶太に、クスクスと笑みが漏れる。

本当に、不器用な人達だ。

「………ガンバってね、セリさん、慶太」

俺を暗闇から救ってくれた彼に、優しい朝日が降り注ぎますように。


願わくば、明日みんなで笑顔で過ごせますように。





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